第12回〜空腹は、ちょう楽しい!
規則正しく、一日三食。
かつてはそれが最も健康的な良い食生活だと言われていました。
子どものころは、きちんと朝食を食べて学校へ行き、みんなで同じ給食を食べ、家に帰ったら家族で夕飯を楽しむものだと教えられた方も多いことでしょう。
しかし、大人になり体が完成しても年齢を問わず、ずっとそれを続けることが、本当に健康的なのでしょうか。
今や書店に行っても動画サイトを開いても、「一日一食」とか「マクロビ生活」とか、さまざまな人が多くの食事法・健康法を唱えています。
そうは言っても、子どもの頃から刷り込まれた一日三食生活が社会のベースになっており、会社ではランチタイムが設けられ、研修や団体旅行などの集団生活では三度の食事が用意されるのが普通なため、わたしたちは特に自分で意識しない限り、何となく一日三食しっかりと食事をする習慣からなかなか抜けられません。
今回は、何を食べてお腹を満たすかではなく、食べない時間・空腹の時間に着目して、腸活ベースで食生活について考えてみたいと思います。
夫のダイエットを成功させた妻のお話。
40代のユミコさんは、ちょっと太り気味な同年代の夫を心配して、健康維持のためダイエットを決行しました。
具体的に行ったことは、ご飯・パン・麺といった糖質の高い食品を控え、その分しっかりめのタンパク質や良質な油脂を含んだメニュー構成にする。
また、丼などの単品メニューに頼らず、なるべく多くの種類の食材を使って複数の副菜を用意することなど。
なかなか手間のかかる面倒な作業ですが、いわゆる「糖質制限ダイエット」ですね。
「会社に行っている時間までは管理できないので、ランチはカレーとかラーメンとか、好きなものを適当に食べていたかもしれませんが(笑)」と言うユミコさん。
それでも、家で食べる食事で糖質を摂りすぎないよう心がけただけで、最初の2ヶ月でするするっと数キロ落ちて、その後も少しずつ成果を上げ続け、1年でトータル13kgの健康的な減量に成功したそうです。
このダイエットの成功は、主に糖質を厳しく制限したことによるものですが、それが健康的に成功した理由は、もう一つあるんです。
実はユミコさんの夫は、昔から「移動中にトイレに行きたくなると困るから」という理由で、朝食を摂らずに会社へ行っているそう。
つまり、糖質控えめの夕飯を食べた後は、翌日のランチタイムまで何も食べない、という毎日を送っているのです。
日常的に、一日約16時間も絶食していたというわけです。
そんなに長い時間、食事を摂らないでいると、体内で何が起きるのでしょうか。
簡単に言うと、飢餓状態に陥った細胞が自食・自浄作用を起こし、古い細胞からタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質の中に侵入した病原微生物を排除したりして、体内を掃除しきれいに保ち、健康状態を維持しようとする働くのです。
それが、いま話題の「オートファジー」です。
一日三食が、老化を促進する!?
オートファジーは、ギリシャ語で「オート=自分」と「ファジー=食べる」を組合せた用語。栄養が足りないと感じた細胞が、自分自身のタンパク質を分解・再利用して、新しい細胞を作る仕組みです。
1963年にベルギーのクリスチャン・ド・デューブ博士が名づけました。
オートファジー〜フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
胎児はへその緒を通じて母親から栄養を摂っているので、生まれてすぐに飢餓状態に陥ります。
そしてお乳やミルクを飲むまでの間は、自分自身のタンパク質を分解して、新しい細胞を作り出す。
つまりオートファジーで生命を維持しているそうです。
オートファジーはそのくらい、ヒトの体の基本的な仕組みで、大人になってもヒトは、食事で摂るタンパク質より体内でリサイクル・合成するタンパク質量の方が多いのです。
その活動は年齢とともに衰えますが、食事と食事の間の飢餓時間を長く保つことでオートファジーが促進されると、細胞の生まれ変わりが活性化されて、肌ツヤや血色がよくなり、髪が元気になります。
このオートファジーが働かなくなると、アルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患を引き起こしやすくなるのだそう。
健康のベースは、やはりタンパク質なのですね。
一日に三回食事をすると、食事と食事の間隔はせいぜい4~6時間でしょう。
腸が食事を消化するのには、食べるものにもよりますが10時間以上かかるそうなので、腸の気持ちで考えると、まだ与えられた仕事を終えていないのに次々に他の仕事が入ってきてしまう。
つまり休みなく働き続ける過労状態になるわけです。
若い頃はそれで良くても、加齢とともにその疲れはさまざまな不調の原因となります。
歳とともに、ヘヴィな食事内容や量を受けつけなくなったと感じている方もいらっしゃるのではありませんか。
慢性的に腸を疲れさせていることで、免疫力が下がり、老化が早まることも分かっています。
育ち盛りの中高生と同じようなペースで食事を続けていると、いくら食べるものをヘルシーにしても、量を減らしても、腸を疲れさせ機能を低下させることにはあまり変わりありません。
オートファジーの観点から見れば、
何をどのくらい食べるかよりも、空腹時間をどれだけ長くできるかの方が重要なのです。
一日三食は、もう大人の体には負担なのかも知れません。
一日二食にすれば、空腹時間が長くなるだけでなく、一回一回の食事でお腹いっぱい食べても、結果的に三食の時よりトータルの食べる量は減ります。
つまり、ダイエットにもなるというわけです。
細かく量を調整したり、面倒なカロリー計算をするよりも、
食事の回数を減らすことで体調は整うというわけです。
あなたも試しに、チャレンジしてみませんか。
空腹が楽しくなってきた!
食べることが大好きな人にとって、食事の回数を減らすことは苦痛に思えるかも知れません。
でも、一日三食、毎回本当に真剣に献立を考えているでしょうか。
朝食なんて「お昼まで体を持たせるため」だけに、義務的にいつも同じものを食べていませんか?
思いきってやめてしまったら、意外と時間の余裕ができて、朝の時間が充実するかも知れません。
また、学校やお勤めに出ている人は、人前でお腹が鳴ると恥ずかしいから「何かお腹に入れなきゃ」と思うかも知れません。
そんなときは、生野菜サラダやチーズ、ヨーグルトや素焼き無塩のナッツを食べてください。
16時間の空腹時間に間食をする際、これらの食べ物ならば大きな影響はないそうです。
オートファジーで細胞を活性化させるために、16時間のあいだ特に避けなければならないのは、糖質です。
ですから、我慢できないからと言ってお菓子やパン、おにぎりなどを食べるのはやめましょう。
夜8時までに夕飯を済ませ、さっさと寝てしまい、翌日のランチまで何も食べないだけで、16時間の絶食は完了します。
朝は絶対食べなきゃ働けない!という人は、野菜サラダや、無糖のヨーグルトで朝食を済ませましょう。
ドレッシングは高糖質なものが多いので、サラダには軽く塩を振るか、調味料代わりにちぎったチーズや砕いたナッツを散らしてくださいね。
初めは空腹が辛くて悲しい気持ちになったり、不安からマイナス思考になったりするかも知れません。
しかし、お腹が鳴ったら、
「よしよし、オートファジーが働いているぞ!」
「今まさに、細胞が若返っているんだな!」
と、捉えれば、つらい空腹もマイナスではなくなります。
さらに慣れてくると、体が軽やかに動き、頭もスッキリして考えがまとまりやすくなったりして、楽しい気持ちにさえなれるでしょう。
だんだんと、「あと2時間で16時間絶食を達成するのに、いま食べちゃったらもったいない!」なんて思えるようになってきたらこっちのもの。
空腹に徐々に慣れていき、気づけばナッツの間食も減っていきます。
細胞活性化のためのオートファジーが、結果的にダイエットにも結びつくのです。
お腹もスッキリ、肌はピカピカ、髪もツヤツヤで言うことなしですね。
さらに乳酸菌で腸をケアしてあげれば、体はきっと答えてくれますので、サプリの常備もお忘れなく。
ちなみに16時間の断食は、あまり体を動かさない日に行う健康法です。
肉体労働の方や、筋トレを日常的に行っている方は、食事を抜くことで逆に筋肉を衰えさせてしまいますので、無理をしないようにしてくださいね。
週に数回ジムに通うなどの運動を行っている方は、運動をしない日だけ実践すると良いでしょう。
毎日でなく週末だけ、平日だけ、と決めて行っても、細胞はちゃんと活性化されるそうです。
さあ、あなたがもし明日から16時間のオートファジータイムを作るとしたら、どんなタイムスケジュールになるでしょう。
睡眠時間の前後に組み込めば、意外と楽に実践できるはずです。
浮いた時間に何をするかも合わせて考えると、空腹に耐える辛い時間でなく、
一日をより楽しく充実させる、すてきな生活改善になるかも知れません。
考えてみれば、地球上の動物たちの中で、満腹の状態をベースとし、少し小腹が空くとすぐに何か食べて満腹状態を維持しようとしているのは、先進国の人間だけではないでしょうか。
野生の動物は、本来空腹が常態。
それでこそ頭も体もきちんと機能して、健康を維持できるのかも知れません。
常に満腹状態という時点で食べ過ぎなのだと思えば、
空腹が基本であり、健康なのだと思えてきます。
きっと、慣れるのは簡単なはずです。
空腹を楽しみ、一回一回の食事を楽しみながら、活き活きと充実した日々を過ごしたいですね。
次回も、腸を元気にして若々しく爽やかに生活を楽しむためのお話をご用意します。
季節の変わり目、体調に気をつけて、どうぞ健康にお過ごしくださいね!