第17回〜腸活は、腸内細菌との共存共栄。
これまで長いこと、さまざまな角度から腸内環境のことを考えてきました。
この辺りで、少し発想を変えて、腸内細菌を「体内にいる他人」と位置づけてみたいと思います。
彼らは確かにわたしたちの体を助ける動きもしてくれますが、思うように育たなかったり、バランスを崩してわたしたちの体に病気を引き起こしたりすることもあります。
細菌感染で病気になるのと同じ。
細菌たちはいつも思い通りにはなってくれず、時には宿主を攻撃することだってある。
ということは、もうこれはわたしたちの一部でなく他人です。
腸内細菌のこともそんなふうに自分の体と切り離して考えることで、より客観的に腸活にアプローチできるのでは?
今回は、そんな観点でお話を進めてみたいと思います。
わたしたちは、腸内に他人を住ませている。
人体を、とても複雑な構造の建物だとしましょう。
腸内細菌たちは、建物そのものではなく、そこに滞在しているスタッフや、来客者みたいなものです。
わたしたちは普段、ヘッドハンティングや面接をして、スタッフをちゃんと選んで雇っています。
食べる食材や調味料を選んだり、サプリメントを成分で選んだりしますよね。
しかし、期待した働きをしてくれるかどうか、快適に過ごしてくれるかは、建物に入ってもらうまで分かりません。
来客も、本当なら選び抜いたすてきな人だけを招待したいものですが、招かれざる客が来て悪さをすることや、泥棒に入られることも、時にはあります。
病原菌や悪玉菌を増やす毒素が、体内に入ってしまう状況ですね。
ただ、優秀なスタッフを常に十分揃えておけば、そんな迷惑客を撃退してくれますから安心です。
なるべく良い働きをするスタッフをたくさん揃えて、好ましい客だけを招き、もし迷惑客や泥棒に入られてもすぐに追い払ってもらえる環境を整えるために建物オーナーができることは、普段の生活を整えることです。
主に食生活。
善玉菌やその助けとなるスタッフをたくさん雇えば、スタッフ同士が勝手に元気づけあって、放っておいても腸内環境は活性化します。
ぜん動運動を促して、便通を改善してくれます。
宿主をコントロールする、悪い細菌たち。
まず知っておきたいのは、「招かれざる客」のほうです。
悪玉菌そのものや、悪玉菌の餌になって彼らを活性化してしまう迷惑者。
また、アレルギーを引き起こして肥満、じんましん、不安やうつの原因となる遅延型アレルギー食品。
そんな悪者ほど、ついつい日常的に家に招きたくなるほど魅力的な姿をしているので、要注意です。
例えば、高脂質で高カロリーに偏った食事。ファストフードや甘いドリンク、揚げ物などがそれです。
悪玉菌はそんな食事を好むため、食べれば食べるほど腸内は悪玉菌優勢に傾きます。
どうしても食べたくなってしまう中毒性を感じる人もいらっしゃるかも知れませんが、それは腸内の悪玉菌に思考までコントロールされている状態かも知れません。
このコラムでも何度か取り上げましたが、脳と腸は密接につながっていて、絶えず影響しあっていますからね。
※第5回〜この冬、抗菌ボディになる! 外敵に負けない体づくり
また、体の組織の材料となるタンパク質は食生活に積極的に取り入れたほうが良いものですが、お肉を食べると悪玉菌が増えやすくなるため、食事の栄養バランスが偏らないように注意が必要です。
敵が来たならやっつけろ! 優秀なスタッフを雇おう。
建物に入ってしまった悪者たちを野放しにしないために大切なのが、普段から常駐させるスタッフやお招きするお客さんの人選です。
例えば食事の栄養バランスや、乳酸菌サプリメントなどですね。
善玉菌を活性化させ、悪玉菌の増殖を抑えてくれる発酵食品は、毎日摂るようにしましょう。
習慣づけるのが難しい方は、サプリメントで補うと良いですね。
それから水溶性食物繊維。
腸内にたっぷりと水分を抱えこみ、便を柔らかくしてくれます。
善玉菌の餌となって、腸内の抗菌作用を高め、免疫力も上げてくれます。
オリゴ糖も、善玉菌の代表である乳酸菌の餌になります。
ヨーグルトにオリゴ糖を混ぜて毎朝食べるなど、習慣にすると常に腸内フローラが整いやすいでしょう。
そして、オメガ3系脂肪酸も重要。
DHAやEPAが腸内のはたらきを活性化してくれます。
青魚やアマニ油、エゴマ油、くるみにも豊富に含まれています。
これら腸内の環境を整え、元気にしてくれる優秀なスタッフたちが、建物の中に常にたくさんいる状態を維持することを意識して、普段から食事やサプリメントを選べば、あなたの体内はいつも美しく保たれるのです。
お腹に悩みがある方や、肌荒れや気持ちの落ち込みに日々の暮らしを濁らされている方も、そう考えると、いきなり何か特別なことをする必要がないことが分かるでしょう。
快適な睡眠と適度な運動、必要な栄養を摂って腸内にいる他人たちを、優秀によく働くスタッフだけにすること。
ぜひ、意識していただけたらと思います。
そうすれば、たまに甘いものや脂っこいものを堪能しても、びくともしない丈夫な建物を維持できるはずです。
毎日毎日、大好きなものを我慢し続けるのは大変です。ストレスが悪玉菌を増やすこともあります。
ですから、無理に我慢するのでなく、ちょっと控えたり、少し意識して優秀な食品を取り入れたり、一駅手前で降りて大股の速足で歩いたり、なるべく陽当たりの良い場所にいるようにしてセロトニンを増やしたり、少しずつできることをして、ときどきご褒美スイーツを楽しみましょう。
今回は、少し発想を変えて腸活についてお話ししてみました。
「体質改善しましょう!」と言うと、自分の体を根本から変えてしまわなければならない、ちょっと面倒な取り組みに見えるかも知れませんが、これを「体内に招き入れる他者を丁寧に選ぶ」と言う視点に変えることで、今日からでもすぐに取り組める事柄として捉え直していただけたらと思います。
バランスの良い食事や寝心地の良いパジャマや布団、心を穏やかにしてくれる読書や映画、気持ちの良い陽射しなど、毎日わたしたちを取り巻いている環境すべてが、実は腸に大きな影響を及ぼしているのです。
それらを心地よいものに整えることが、腸を整えることにこんなにも直接つながっていることを知っていただき、ご自身をいたわってあげてほしいと願っています。
次回も、ワクワクと楽しみながら、軽やかに実践できる腸活について、お話ししたいと思います。
楽しみにお待ちいただければうれしいです。