「第二の脳」といわれる、腸の「意外な働き」

人の腸は、近年「腸の働き」について研究が進み、改めて腸の健康が注目されています。

腸には、食べ物を「消化する」こととは別の働きがあり、腸が人間の他の部位に比べ、最も体内免疫に関わる器官であることや、鬱などの心の病に影響する神経伝達物質の分泌を行っていることなど、意外な腸の働きが判ってきました。

 

「え、心の病まで腸が関係してるの?」って少々驚きでしたが…

『腸は「第二の脳」』とまで言われているのは有名な話しですね。

 

今回は、そんな「腸」の「意外な働き」についてお話しします。

 

 

 

「腸」の基本的な働きとは〜食べ物を消化し栄養素を吸収する

まずは、皆さんが知っている腸の基本的な働きについて

人は食べ物を口から摂取し、胃で炭水化物やたんぱく質の消化作業を行い、残りは小腸へたどり着きます。

小腸の更に本格的な消化作業で「脂肪の分解」が行われ、小腸の内壁にある絨毛(じゅうもう)から栄養分を吸収します。

栄養分は、やがて肝臓から血液によって全身に行き渡ります。

 

一方、小腸で吸収されなかった栄養分の残りカスは、大腸にたどり着き、徐々に残りかすから水分が吸収され、ほどよい固さの便を形成、やがて体の外に排泄されます。

 

因みにこの時、腸の運動が弱まったり、水分が正常に吸収されていないと、便秘や下痢を引き起こす原因になります。

 

要約すると、食べ物を消化し、栄養分を吸収する。

これが「腸」の「基本的な働き」です。

 

しかし、腸には、口から入れた食べ物を「消化する」以外に別の働きがあります。

 

 

腸には、身体にとって有害な物を侵入させない働きがある〜腸内の免疫システム

それは、腸が他の部位や器官に比べ「最も体内免疫に関わる器官」である、という点です。

免疫とは、体の外部から侵入する「細菌」や「ウィルス」「病原体」からの攻撃を防御する機能のことです。

 

例えば、人は口から食べ物を入れるとき、食べ物だけではなく身体に有害な「細菌」や「ウィルス」といった物質を同時に摂取してしまいます。

ところが、腸には、細菌やウイルス、病原体などの免疫の働きに関わる細胞の60%以上が腸に集まっているといわれ、細菌やウイルス、病原体などの外敵の侵入を感知して排除する「免疫」という仕組みが備わっていて、身体に有害な菌が体内に侵入すると、有害物を体内から排除しようと、下痢を起こすなどして排泄して身体を防御します。

 

私たちの身体の健康は、腸内の「免疫細胞」による免疫システムの働きが維持しているというわけです。

 

腸内の働きが鈍ったり、腸の動きが低下すると、腸の「免疫細胞」の活動が弱まり「免疫力」が低下することで、風邪など病気になりやすい体になるといわれています。

 

腸内環境の状況によって腸内の免疫システムの働きが左右されるということですね。

なぜ腸が「第二の脳」と言われるのでしょう?

私たち人間の体のほとんどの器官は、「脳」からの指令で動いています。

手の動きや脚で歩くこと、目で見ること、鼻で匂いを嗅ぐことなどは全て脳からの指令で動いています。

手が自分の判断で動くことはありませんし、足が障害物の危険を察知して勝手に止まることはありません。

 

ところが「腸」は、脳からの指令なしで独自に判断し働く器官なのです。

 

先程もお話しした通り、有害な菌が身体の中に侵入すると、有害な菌を体内から排除するために、私たち自身が意図せず下痢を起こすなどして、外部に吐き出し身体を防御します。

この防御の判断が「脳」ではなく、「腸」が独自の判断で行っている働きです。

 

そう考えると、ちょっと驚きですよね?

腸って…ちょースゴい!…

 

 

また、腸は身体の器官の中で脳に次いで2番目に多くの神経細胞が存在し、神経伝達物資の分泌などで、人の心・感情にも深くかかわっていることも、近年の研究で明らかになってきています。

 

セロトニンという、精神の安定や安心感、平常心など、脳の働きに影響する神経伝達物資が、必須アミノ酸の一種であるトリプトファンという栄養素から腸内で合成され、腸で分泌されるといわれています。

トリプトファンは人の体内では生成できないため食事から摂取する必要があり、トリプトファンが豊富な食べ物が腸に届くことでセロトニンが分泌されるということなんですね。

 

このように、腸内に存在する細かな神経細胞によって、有害な菌が体内に入ると体内から排除する独自の判断が行われることや、神経伝達物資の分泌などで、人の心・感情にも深くかかわっていることから、腸は「第二の脳」と呼ばれているのです。