第5回〜この冬、抗菌ボディになる! 外敵に負けない体づくり

 

 

昨今、「免疫」という言葉をよく耳にしませんか。

免疫とは、体内に侵入した病原菌やウイルスをすばやく見つけ、体が害を受ける前に攻撃し排除する、人間にとって頼もしい働きのことです。

 

「腸活」と「免疫力」という言葉はよくセットで耳にしますし、互いに関係が深いというイメージはお持ちでしょう。

 

何となく、「腸が元気だと病気になりにくいのかな」ということは分かりますよね。

 

 

でも、具体的にそれがなぜなのか、ご存じでしょうか?

 

実は、理屈はとてもシンプルで、なるほどと納得できるものなんです。

ぜひ読んで、ご自身の健康づくりに活かしてくださいね。

 

 

 

腸は体内の外界。無防備に危険にさらされている!?

 

ヒトの腸壁は、広げるとテニスコート一面分!?

 

当たり前のことですが、腸は体内にあります。

でも同時に、その両端にある口と肛門を介して、常に外界と接しているとも言えます。

 

つまり、他の内臓と違い、腸だけは体内でも直接外界と通じている一本の管なわけです。

 

そして、その腸管の表面積は、テニスコートくらいの広さがあると言われています。

 

そんな広大な表面積を持ちながら、絶えず外と接しているのですから、ヒトが生きている限りずっと、腸管粘膜は細菌やウイルス、化学物質、寄生虫などとの接触の危険にさらされているのです。

 

 

腸は、入ってきた食べ物を消化吸収する器官だと思われていますが、人知れず、侵入してくる目に見えないウイルスや細菌といった外敵を警戒し、いつも戦っています。

 

そして、そんな悪者たちが全身に回ったり増殖したりすることを防いでくれるのが、「免疫細胞」と呼ばれる細胞たち。

ヒトの持つ免疫細胞の約7割は、実は腸に棲息しています。

 

ここまでのお話を踏まえれば、その理由も納得でしょう。

 

 

食べ物を含む外からのさまざまな物質が、最初に入ってくる腸は、体内にとっては玄関口。

侵入しようとするバイ菌やウイルスを家に持ち込まないため、玄関で消毒したり、マスクを捨てたりするのと同じで、腸に到着した段階で「悪いヤツはやっつけてしまおう」というのが、腸内免疫細胞の重要な役割です。

 

昔から、人体や臓器の働きは「脳」という司令塔からの命令でコントロールされていると思われていました。

 

ところが、2017年末から始まったNHKの大型特別企画『人体〜神秘の巨大ネットワーク』で、「体の中で、あらゆる臓器や細胞が互いに会話しながら、情報交換し支え合って働いている」という考え方がクローズアップされ、大きな反響を呼びました。

 

臓器同士は、「メッセージ物質」によって直接情報を伝達しているそうです。

いわば、脳を介さずに互いに会話しているようなもの。

たとえば酸素が足りなくなると、尿を作る腎臓がメッセージ物質を出し、それを受け取った骨が、脳の指令なしに自己判断で赤血球を増産する、といった具合です。

 

同じように、病原菌が腸壁を破って体内に侵入しようとすると、腸壁内部の免疫細胞がそれに気づいて、メッセージ物質を出します。

するとメッセージを受け取った腸壁の細胞が抗菌物質を分泌して敵を撃退しようと戦うのです。

私たちの体って、なんて頼もしいのでしょう。

 

 

 

「免疫細胞」の暴走事件の多くは、腸で起きていた!

 

私たちは体内に、免疫訓練場を持っている?!

 

こうした臓器間のネットワークが壊れたり、バランスを崩したりすると、病気になってしまいます。

 

例えば、外敵がいないのに「敵がいるぞ」というメッセージ物質を間違って放出し戦闘モードになると、免疫細胞は攻撃的なメッセージをどんどん拡散してしまいます。

 

敵を攻撃するための毒物が、それを必要としていない体内に放出されてしまうことで、糖尿病、動脈硬化や心筋梗塞を引き起こすことも。

 

最近の研究では、インフルエンザや肺炎などの、一見すると腸とは関係のなさそうな病気に対する免疫力も、腸と密接に関係していることが分かってきているそうです。

 

専門的な用語で恐縮ですが、小腸の壁の一部に「パイエル板」と呼ばれる絨毛が未発達な部分があるそうです。

 

このパイエル板の表面には、食物のかけらや細菌、ウイルスなどの異物をわざと体内に取り込む入口があり、引き込んだ異物の特徴を新しい免疫細胞たちに覚えさせ、体に害のある敵の特徴を学習させているそうです。

 

つまり、パイエル板は新人細胞の「免疫訓練場」だというのです。

 

こうして、腸で訓練を受けた免疫細胞たちは、血流に乗って全身に運ばれ、体のあちこちで病原菌やウイルスを見つけて攻撃する兵士として働くのです。

 

よくできたシステムですね。

このことから、腸こそが全身の健康を司る免疫本部だと言うことができるでしょう。

 

 

前述した免疫細胞の暴走が引き起こす症状としては、花粉症などのアレルギーも有名ですね。

体を守るための訓練をばっちり受けたはずの免疫細胞たちが暴走し、本来攻撃する必要のないものまで攻撃する異常事態が急増し、現代人を苦しめています。

 

NHKスペシャル『人体』によると、こうした免疫暴走による病気を患う人の腸内で、細菌の異常が生じていることが分かったそうです。

 

腸内の環境を守ることこそ、健康の第一歩、かも知れませんね。

 

 

 

さあ、抗菌ボディを目指そう。

 

外敵に負けない抗菌ボディは、薬いらずで医者いらず

 

世界各国の人々と、日本人の腸内環境を比較すると、日本人の腸内細菌は、免疫をコントロールする物質を作る力が断トツに強かった、という研究結果があるそうです。

 

つまり、日本人は生まれながらに免疫力の強い“抗菌ボディ”の資質があるということ。

ただし、腸内細菌が免疫コントロール物質を作るためには、食物繊維が必要です。

 

戦後、食習慣が急激に欧米化したことで、食物繊維の摂取量が減り、そのことが免疫の暴走につながっている可能性に、研究者たちは注目しているといいます。

 

そこで、日本の伝統食である納豆のお話。

 

納豆菌はとても繁殖力が強いため、ほかの細菌が繁殖する余地をなくしてしまうとも言われます。

ですから、酒蔵で働く人は、蔵に棲む大切な菌たちを守るため、納豆を食べないと言いますよね。

納豆菌が蔵に侵入すると、瞬く間においしいお酒を醸してくれる菌を駆逐するのだとか。

 

また、海外旅行に行くときは必ず納豆を持参する、という人の話を聞いたことがあります。

馴染みのない現地の発酵食品に含まれる菌が体質に合わず、お腹が痛くなった時に、納豆を食べると体内でその菌を駆逐し、正常に戻してくれるからだそうです。

 

確かに日本人の腸は、日本の伝統食である納豆との相性がとても良いはず。

 

杜氏さんたちにタブー扱いされるほど強い生命力を持つ納豆を食べることは、病原菌への抵抗力をつける意味でも、腸内フローラを整えるための食物繊維を摂る意味でも、有効です。

 

また、納豆のネバネバ成分には、ナットウキナーゼという、フィブリン(血栓の元となるタンパク質)を分解する酵素が豊富に含まれていることが、よく知られています。

さまざまな意味で、納豆は免疫力の強い抗菌ボディづくりに一役買ってくれることでしょう。

 

納豆が苦手な人や、毎日食べるのは大変だと感じる人は、ナットウキナーゼの含まれる乳酸菌サプリメントを利用するのも、手軽で良いですね。

 

 

 

さて、今回のお話をまとめると、「免疫力」と「腸活」がセットで語られることが多いのは、免疫細胞の7割が腸にいるから。

 

腸を元気にすることで、病気になりにくく、外敵からのダメージを受けにくい体が作れるから。

 

そのため、外敵の攻撃に強い体、つまり“抗菌ボディ”をつくるには、腸内フローラをすこやかに育てる乳酸菌と、そのエサになる食物繊維をしっかり摂ることが大切で、納豆や、その成分を含むサプリメントも強い味方になる、というお話でした。

 

 

では、次回も乳酸菌と腸活のお話をなるべく分かりやすく、楽しくお届けしますので、待っててくださいね!