第7回〜大腸活、してますか?
動物の体の中で、いちばん先に生まれた臓器をご存じですか?
やっぱり心臓?
それとも脳?
いいえ、実は腸なんだそうです。
進化系の原点とされるのは腔腸(こうちょう)動物、つまりヒドラやイソギンチャクですが、彼らには、口と肛門の区別がない原始的な腸管があり、それを外から支える組織がある、そんなシンプルな構造をしています。
※ヒドラ とは、刺胞動物のうちヒドロ虫綱花クラゲ目ヒドラ科に属する淡水産の無脊椎動物の総称。 (Wikipediaより)
それが、生物の複雑な進化の過程で、腸管だけで果たすことが難しくなってきた機能を、肺、胃、脳、肝臓などの臓器に分化し、役割分担してきたのです。
ヒドラはお腹が空になると、腸管が直接、神経叢にエサを食べる指令を出します。
この機能が進化して、脳になったというわけです。
肝臓や膵臓はもちろんのこと、脳も、実は腸が進化したものなんですね。
改めて、腸の役割を“ちょう”詳しく解説します。
さて、そんな大切な腸ですが、人体ではさらに大腸と小腸に分かれて役割分担しています。
食事をすると、小腸が食物を消化して栄養素を吸収。
大腸は、小腸で液状に分解され送られて来た食物から、水やナトリウムを吸収しながら、いらないものを固形の排泄物にします。
このとき、大腸内に100種類以上棲んでいる大腸菌や乳酸菌が、胃や小腸で消化されなかった食物繊維を分解してエネルギー源にしたり、異物からの感染を予防したりします。
乳酸菌は、大腸の中で活躍しているんですね。
つまり「腸活」は、大腸へのアプローチがメインなのです。
大腸の役割を理解するために、大腸が正常に動かなくなるとどんなことが起こるか、ご紹介しましょう。
たとえば、大腸ガンの症状とは、どんなものでしょうか。
下痢と便秘の繰り返し、便が細くなる、残る、おなかが張る、腹痛、貧血…と、主にお通じに異常が起こることがわかります。
進行すると腸閉塞になり、便が出なくなることもあるそう。
また、潰瘍性大腸炎という難病がありますが、こちらの主な症状は下痢や血便、腹痛、発熱、貧血などだそうです。
こちらもやはり、お通じに直結するのですね。
これらの大きな病気の例だけでなく、健康な体でもお通じにトラブルが出始めると、排出されるべき毒素や老廃物が、体内に長く止まってしまうことになるため、ニキビや肌荒れなどの肌トラブルが出るようになります。
便秘の原因はさまざまで、睡眠不足や運動不足、ストレス、薬の影響、筋力低下、ホルモンバランス、各種の病気などが考えられますが、予防法を調べると、どの本やサイトにも「生活習慣の改善」と書いてあります。
腸が変わると人生が変わる理由。
生活習慣の改善。
つまり、バランスの良い食事をし、適度な運動もして、質の良い睡眠を取り、ストレスを溜めない生活をすること。
また飲酒は適切な量を超えないように。
タバコは吸わない。
こうして並べてみると、あまりにも当たり前すぎることで、
いやいやいや…
と言いたくなりませんか?
大腸に限らず、健康ってそう言うことでしょう? と。
そんなこと頭では知ってるけど、現実にはそれが難しいんじゃない! と。
でも、生物の原始が腸から始まっていることを考えると、すこやかな腸を守るためにすべきことが、健康全般に言える万人共通の原理に等しいことは、ごく自然なのだと納得できる気がします。
腸の元気が、体の元気。
そして同時に、
こころの元気にも直結する。
だって、肺も脳も元は腸なのだから。
昔は心の動きは脳の動きだと思われていましたが、近年、心の動きの大半は腸の動きに直結していることが分かってきました。
すなわち、腸の健康を大切にすることが全身の健康と心の安定をもたらし、人生を豊かにすると言うことができるんですね。
たかがおなか、されどおなか。
考えてみれば、心底憤ることを、昔から「はらわたが煮えくり返る」と言いますね。
はらわたは漢字で「腸」。
体内で腸がグツグツと煮えたぎるような怒り。
体がこわばって小刻みに震え、全身の毛が逆立つような強い怒りをとてもよく言い表した見事な言葉ですね。
そこまで強い怒りでなくても、「腹がたつ」なんて普段から言いますよね。
いつまでもイライラしてしまうことを「腹の虫が収まらない」とも言います。
心の動きが脳だけの動きなら、怒りも「頭にくる」「怒髪天を突く」など、頭に関わる言葉だけで構成されるはずなのに、こんなに「腹」「腸」が出てくるのは、昔の人の実感なのでしょう。
他にも、考えや企みがよくわかることを「はらわたが見え透く」と言います。
頭や脳でないところが、面白いですね。
また、これ以上ないほどの激しい悲しみを「断腸の思い」と言うこともあります。
腸がちぎれるような悲しみだなんて、昔の人の表現力には舌を巻きますね。
便を元気に動かす大腸に。
さて。
食事のバランスや運動、睡眠、節酒、禁煙はお話ししました。
中でも運動に関してですが、腸のあるおなか周りの筋肉が衰えると、腸の動きも鈍ってきますので、腹筋を鍛えることも立派な腸活と言うことができます。
とは言え、筋トレってどうしても苦手な人は多いですよね。
忙しいとなかなかジムにも行けませんし、そうでなくても今は、ウィルスの心配もしなければなりませんし。
もっと気軽に日常的に、腹筋を鍛えようと思ったら、歩くフォームを改善することもひとつの方法です。
腹筋を鍛える歩き方とは、頭のてっぺんから糸で吊るされているような意識で背筋をすっと伸ばし、一度吸う息でお腹を思い切り膨らませ、吐く息でおへそをお腹の中に引き込むようにぐっと下腹を凹ませます。
そのお腹をキープしたまま、なるべく大股で歩くのです。
慣れるまではなかなかきついものですが、歩幅は広くなり、背筋も伸びて姿勢が良くなるので、それだけでスタイルが良くなったように見えます。
もちろん、続けることでお腹に筋肉がついて引き締まってくるので、筋トレと腸活とダイエットが同時にできる、とても効率の良い方法です。
ぜひ、今日から始めてくださいね。
また、歌を歌うことも腹筋に良いそうです。
喉を開いて、お腹からしっかりと声を出すことで、お腹の筋肉が動き、腸も動かしてくれます。
最近はマスク生活で口元をあまり動かさずに過ごすことが増えたため、喉の筋肉も衰えて、ご年配の方の誤嚥が増えていると聞きます。
ストレス発散もかねて、感染対策を十分に行いながら、カラオケなどで大きな声で歌う時間を持ってはいかがでしょうか。
そして、大腸のすこやかな働きに欠かせないビフィズス菌を毎日摂ることを忘れないでください。
特に、お肉など動物性のタンパク質を摂るときは、悪玉菌の増殖を抑えるため、乳酸菌サプリや発酵食品を同時に摂って、大腸の中を善玉菌優勢に保ちたいですね。
今回の話をまとめると、よく言う「腸活」とはつまり「大腸へのアプローチ」のことで、大腸の健康を守ることが心身を守り、ひいてはあなたの人生を元気にするというわけですね。
そして、大腸を元気にするためには、バランスの良い健康的な生活に加え、乳酸菌を毎日摂り続け、善玉菌優勢の環境を守ってあげることも大切だと言うことがお分かりいただけたと思います。
では次回は、乳酸菌の種類や、体質によって合わない人もいる?というお話をお届けします。
お楽しみに!