ゆっくり、美しく、健康に年齢を重ねる
ストレスや生活環境で「老化スピード」が加速している時代
絶世の美女小野小町も、年老いていく自分の姿を嘆き歌った
花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
小野小町
世界三大美人の一人と言われる、小野小町の有名な歌です。
桜の儚さに掛けて、自身の容姿の衰え(老化)を嘆く歌です。
無駄に年月をすごして、物想いにふけっている間に、桜の花もわが身もはかなく色あせてしまった…
と言うような意味ですね。
因みに、この「世界三大美人」に「小野小町」が通用するのは日本のみで、他国では「小野小町」の代わりにギリシア神話上の美女、トロイのヘレンが入るそうです…
さて、話を戻しますと、絶世の美女として七小町など数々の逸話がある小町さんも歌っているように、「自然の有機生物は時と共に移ろう」、つまり「姿、形があるものは、時が経てば変化していくもの」です。
そして、人間の感覚としては、年齢を増すごとに時の経つスピードは早く、身の衰えもあっという間に感じるようになるもの。
更に、ストレスフルな今の時代、現代人は「老化スピードが加速している」とも言われています。
年齢ごとの「老化のスピード」目安
東洋医学には、男性は8年ごと、女性は7年ごとにステージが変わると、捉えられています。
しかし、実際には同じ年齢でみんながそうかと言えばそうではありません。
年齢ごとの容姿や身体機能の「目安」のようなものと考えて下さい。
周りを見渡してみると、同じ年齢でも身体の健康状態や、活力、老化のスピード…人それぞれです。
同窓会や結婚式で、その差を感じた経験がある方もいるのではないでしょうか?
いずれにしても、人は年齢を重ねる毎に「老いる」ことは避けられません。
ただし、「ゆっくり、美しく、健康に年齢を重ねる」ことはできます。
私たちのテーマのひとつ「健康寿命を延ばす」ということは、言い換えると「老化のスピード」を抑え、「ゆっくり、美しく、健康に年齢を重ねる」ということです。
日々の「養生の差」が「老化のスピード」を左右する?
最近の研究では、老化に影響するのは、遺伝的要因25%に対して、生活環境要因が75%と言われています。
さらに、デンマークの研究によると、70才以上の一卵性双生児387人を追跡したところ、歳を取って見えた方が、もう一人の兄弟より早く亡くなっている事がわかったそうです。
実はこの事を、日本で江戸時代から説いていた人がいます。
江戸時代の本草学者であり、儒学者である
貝原益軒です。
貝原益軒は、
人の命はもとより天から受けた生まれつきのものであるが、
養生をよくすれば長命となり、不摂生であれば短命となる
と言っています。
日々の養生の差で「老化のスピード」に差がでてくるのです。
実際、貝原益軒は「人生50年」と言われていた時代に、84才まで生きたと言われています。
では、その日々の養生とは、どの様に行えば良いのでしょうか?
部分に対応した改善方や養生法は、枚挙にいとまがありません。
ですので、今日は東洋医学の一つ「気、血、水」の流れをあげたいと思います。
健康な状態を保つ「気・血・水」3つの流れ
人の生命を営むのに、3つの大きな流れがあるとされます。
それが「気、血、水」です。
この3つの流れは、お互い支え合いながら、身体を営んでいます。
「気、血、水」、3つの流れがスムーズだと、健康な状態を保つことができます。
日々心身に受けるダメージやストレスにも自ら回復できる「自然治癒力が機能する」健康な身体になります。
これこそが、老化のスピードの差になるのです!
しかし、この流れが一つでも滞りがちになると、身体は様々な症状が発生したり、身体が回復しきれない状態になってしまいます。
それでは具体的に見ていきましょう。
健康な状態を保つ「気」とは?
「元気」と言う言葉があるように、「気」とは、目には見えないけれど、生命活動・身体を支える根源的な力です。
また「病は気から」と言うように、「気」の不調は「血」「水」、「五臓」にも影響を与え不調を引き起こします。
先述の貝原益軒も、『養生訓』の中で「養生の道は「気」を整えることにある」と、特に「気」の重要性を説いています。
「気」の不調と養生法
気の不調は3つあります。
① 気虚(ききょ)
気が不足している状態です。
栄養不足、過労や加齢による気の消耗などが原因です。
【症状】
汗をかく、食欲不振、全身の倦怠感など
【養生】
気を補うのは食事です。
しかし、胃腸の不調から上手く「気」が養えない状態でもあるので、胃に優しい消化の良い食事を心がけましょう。
穀類、イモ類、豆類は、胃腸の働きを高め、気を徐々に補う作用があります。
反対に、朝鮮人参、肉類、エビ、うなぎを食べると速やかに「気」を充実させる働きがあります。
また、睡眠も「気」を増やす働きがあります。
睡眠の質を高める工夫(寝る前の半身浴、スマホなど見るのを止めて脳を休めるなど)をしましょう。
② 気滞(きたい)
「気」はあるものの、働きが悪く、停滞している状態です。
過度のストレスなどが原因です。
悪化すると気虚になります。
【症状】
頭重感、胸の張り、お腹の張りなど
【養生】
香りの高い野菜や、柑橘類は「気」の流れを促す働きがあります。
また、酸味のある食べ物も肝機能を高め、「気」の巡りをよくします。
ストレスを緩和する事もポイントなので、日常生活で、onとoffの切り替えを意識的に行う事、リラックスする時間、好きな事に没頭する時間を作ることも大切です。
③ 気逆(きぎゃく)
「気」の流れに乱れが生じ、下から上に逆流している状態です。
悪化すると気虚になります。
【症状】
イライラ、怒りっぽい、のぼせ、発作的な頭痛、胸痛、咳、吐き気、ゲップなど。
【養生】
シナモンは上った気を下に降下させ、正しく巡らせる作用があります。
感情的な起伏が激しいと乱れやすくなります。普段から穏やかな生活を意識しましょう。
マインドフルネスや、深呼吸もおすすめです。
健康な状態を保つ「血」とは?
全身に栄養や酸素を届ける重要な要素。
精神を支える働きもあります。また老廃物の運搬も重要な働きです。
漢方には「女子は血を以て本となす」と言う言葉がある程、女性にとってはとても影響があるものです。
血の不調と養生法
血の不調には2つあります。
① 瘀血(おけつ)
血が順調に流れず、身体の一部で停滞している状態です。
【症状】
顔色が悪い(どす黒い)、月経痛、慢性的な疼痛(刺す様な痛み)、冷え
【養生】
全身に血が行き渡るように、入浴や、軽い運動などを日常的に取り入れましょう。
② 血虚(けっきょ)
血が不足している状態です。
栄養不足や、多量の出血などが原因です。
【症状】
貧血、立ちくらみ、しびれ、痙攣、動機、月経不順、白髪、抜け毛、顔色が悪くなる。
また、目、爪に影響が出やすくなります。
【養生】
黒い食材(プルーン、黒ごまなど)と赤色の食材(人参、レバーなど)は血を増やす働きがあります。
種子、実類の食材もおすすめです。
健康な状態を保つ「水」とは?
血以外の水分の事。唾液、胃液、汗、涙などが含まれます。
内臓や関節、骨髄など全身に潤いを与ます。
五臓の働きをスムーズにして、排泄も促したり、体温調節を助ける働きもあります。
水の不調と養生法
①水毒(すいどく)
水の過不足、巡りの悪さをまとめて「水毒(すいどく)」と言います。
【症状】
目の乾燥、めまい、むくみ、喉の渇き、便秘、下痢
【養生】
普段から良質な水を摂取することはもちろんですが、胃腸の働きを強くすることも水の巡りを良くするのに大切です。
キャベツは胃の働きを助けます。
また利尿作用のある、ニガウリやアサリ、小豆もおすすめです。
冷えると巡りが悪くなるので、身体を冷やさない事。
運動や入浴で汗をかいて、余分な水分を体外に排出する事も大切ですね。
適度な食事、運動、睡眠
この記事を書いていて、思い出した事があります。
個人的な話になりますが、筆者は以前ヨガをしており、ある教えに触れ、自己判断で勝手に肉類を一切食べない生活を過ごしていました。(約2年位…)のめり込んだらとことんやる性格でした…^_^;
ある日、急にデトックスが始まったのか、かなりの不正出血で倒れ、救急車で病院に運ばれる事に!
その直後から、無性にお肉が食べたくなり、食べる様になりました。
と同時に、しばらくヨガはもとより、何もする気がおきませんでした。
まさに、血虚から気虚の状態です。
東洋思想は「中道」の教えを説いています。
なんでも程々に「かたよらない」、「こだわらない」、「とらわれない」の精神ですね。
それぞれの不調が深刻でない場合、食事、運動、睡眠で「気、血、水」は整える事ができると言われます。
良いものも、食べ過ぎることなく、適量を良く噛んで食べる。
身体の器にあった運動を適度にする。
そして、良く眠る。
日々の基本的な養生の心がけで、ゆっくり、美しく、健やかに年を重ねていきたいものですね。