第27回〜秋、「書く」知的腸活のススメ。
前回、脳と腸は密接な関係があり、互いにおおきく影響しあっているとお話ししました(第26回「脳と腸のとっても密な関係。」参照)。
つまり、腸が不調だと気分も落ち込みやすく、脳がハッピーだと腸も元気になりやすいということです。
寒くなり、室内で本を読んだり映画を観たりして、静かに過ごすことが増える時期でもあります。
今回は食事や運動でなく、頭で考えることを中心とした「知的な腸活」についてお話ししたいと思います。
腸の状態を記録・分析しよう。
腸の不調に悩みがちな方の中には、なるべく発酵食品や乳酸菌を意識して摂ったり、規則正しい生活を心がけたりしている方も多いことでしょう。
食事や睡眠、生活習慣を改善するのはとても大切なことです。
しかし、案外、不調を引き起こす「精神的な原因」には無頓着な方も多いもの。
仕事や人間関係など、自分の意識だけでは変えられないところに原因があるため、分かっていてもどうしようもない人もたくさんいらっしゃるでしょう。
とは言え、できることはあります。
まずは、ご自身のお腹の不調について、全体像を把握します。
認知行動療法と言いますが、認知(ものごとの受け取り方や考え方)に働きかけて、気持ちを楽にすることができます。
置かれている状況を変えることはできなくても、悪循環の正体を知ることで、結果を変えることはできるかも知れないのです。
まずは毎日、ノートにその日のできごとと、そのときの感情と、そのときに起こった腸や体の反応を書き留めます。
腸日記です。
たとえば「寝坊して会社に遅刻した。
今月に入ってもう2回目だ。
当たり前のことができない自分に腹が立つ。
お腹が痛くて便も出ない。
など。
そして改善策がないか考え、記録します。
「最近、営業先の担当者が代わりコミュニケーションがうまく行っていないため、悩みが尽きず寝つきが悪い。
睡眠の質を上げるために、寝具や食事を見直そう」など。
不調について書くというと、一見、ネガティブで落ち込みそうにも見えますが、起こった事象と体調との相関関係が見えてくると、事象は変えられなくても自分の認知と行動なら変えられることに気づけるものです。
事象とお通じの状態との、因果関係を知る。
その「腸日記」に、忘れずに記録していただきたいことがあります。
それは、毎日の食事内容と、お通じの回数と状態。
食事の内容は、全て記録する必要はありませんが、主食に何を食べたか、主菜と副菜くらいは書いておきましょう。
そして、飲んだサプリメントも。
さらに、できごとや感情の記録を読んで、客観的に自分の思考の癖を分析します。
客観的になる方法としては、それを自分の大好きな友人の日記だと思って読むことです。
人はつい、自分に対して他人に対するより厳しくジャッジしてしまいます。
努力してもまだ努力が足りないと思ったり、がんばってももっとがんばれたはずだと思ったり。
でも好きな友人が同じことをしていたら、きっと「すごくがんばったね!」と言うのではないでしょうか!
大切な友人を見るように、自分の感情を眺めてみると、起こった事象に対して抱いた感情が歪んでいたり、偏った方向へのバイアスがかかっていたりといった、思考の癖に気づくことがあるでしょう。
「母親が絡むとムキになってしまいがちだな」
とか
「年下の同性にちょっと厳しすぎるかな」
とか。
あるいは、
「万人に好かれようとしていないか? そんなことは無理だと知っているのに」
「自分に求める理想が高すぎるのかな」
などなど。
すると、落ち込みや嘆きの感情が、起こった事象とさほど関係なく生まれていたことに気づけるかも知れません。
「そこまで落ち込むほどのことでもなかったな」
とか
「これはあの人が不機嫌だっただけで、私が悪くて起こった現象じゃないな」
とか。
そして、事象から導かれる感情に良い変化が現れるでしょう。
「落ち込む必要ないな!」
「時間が解決してくれるのを待とう」
と。
落ち込んだり悩んだりすることがなく、体調も良かった日には、そのことも書き留めておきましょう。
その日よかったことを三つ書く、というのも良いでしょう。
感謝が生まれて、より快適に日々を過ごせるようになります。
不調の原因が分かると、解決策も見えてくる。
腸日記を書き進めながら、ときどき振り返ってチェックをしてみてください。
体や腸の状態を10点満点で記録しておき、食事の内容や生理周期などと比較してみても良いでしょう。
食べると翌日の調子を崩しやすくなる物や、悩みの影響で調子を悪くしていた事実など、記録しなければ気づけなかった事実を見つけられるかも知れません。
すると、たとえ事象を変えることができなくても、身を守るためにその事象の捉え方を事前に考えたり、決めたりすることができます。
認知を変えることで行動が変わり、心の持ちようが変わります。
結果として腸の状態が変わり、それが脳に影響してすべてが変わるというわけです。
書くことがお好きな方は、ついでに肌や髪の状態なども記録しておくと、意外な因果関係に気づけるかも知れません。
それは「こういうときにこうすれば、自分はこうなる」という、誰のものでもない最強の「自分のトリセツ」になりますね。
自分との付き合い方がうまい人は、魅力的です。
気づけば自分のことを好きになり、周囲にはあなたの魅力に惹かれて寄って来る人があるかも知れません。
体調も気分も良くなって、人としての魅力も増す(かも知れない)知的腸活、この秋冬から始めてみませんか?
「書く」という腸活は、あまり他で聞かれたことがないかもしれません。
ペンを握ることがストレスになる人は、PCやスマホのメモ機能を使っても結構です。
まずは自分を客観的に、優しく見てみましょう。
ではまた次回、楽しい腸活と乳酸菌のお話をご用意しますので、お楽しみに!