第16回〜腸活の新常識! 短鎖脂肪酸のお話。

 

 

最近、徐々に話題になっている「短鎖脂肪酸」をご存じですか?

 

人の大腸の中で、腸内細菌が作り出す酸(有機酸)の一種です。

それは酢酸やプロピオン酸、酪酸といった種類があり、特に酪酸は、腸上皮細胞のもっとも重要なエネルギー源で、抗炎症作用などの、優れたはたらきを持っています。

 

実はこの短鎖脂肪酸が、腸内を適度な酸性に保ち、腸にとって、つまり人の健康にとって、大変重要であることが分かってきたのです。

 

漢字が多いので、少し固いお話に見えるかも知れませんが、今回はこの新事実、短鎖脂肪酸についてご紹介したいと思います。

 

 

 

短鎖脂肪酸のスゴイ健康効果とは。

 

食べすぎても、短鎖脂肪酸が消費してくれる!?

 

哺乳類は、食物を食べて、主にブドウ糖を燃料として利用します。

 

その際、大腸内で炭水化物に含まれる消化されにくい食物繊維(難消化性炭水化物と呼ばれます)やオリゴ糖を、腸内細菌が発酵する作用により「短鎖脂肪酸」が合成されます。

 

食事でエネルギーを摂りすぎると、この短鎖脂肪酸が交感神経を活性化して、エネルギーの消費量をぐんと増やしてくれて肥満を予防してくれます。

また免疫機能も調整する健康効果があります。

 

さらに短鎖脂肪酸は、腸内を有害な菌が増殖しにくい弱酸性の環境に整え、大腸の粘膜を刺激してぜん動運動を促したりするほか、その一部は血液に乗って全身を駆けめぐり、肝臓、腎臓、筋肉などでエネルギー源や脂肪を合成する材料になります。

 

 

つまり、短鎖脂肪酸は、わたしたちの健康において、実にさまざまな働きを持ち、それを支え向上してくれることが分かってきたのです。

 

 

 

短鎖脂肪酸不足になると、起こること。

 

腸内フローラを美しく整えてくれるのが、短鎖脂肪酸

 

さて、そんな短鎖脂肪酸。

 

どんなときに作り出されるかを改めてご説明しますね。

 

まず、炭水化物にはヒトが持っている消化酵素で消化できるものと、簡単には消化できないものがあるのをご存じですか?

 

前者を易消化性炭水化物と呼び、主に糖類を指します。

そして後者を難消化性炭水化物と呼び、こちらにはオリゴ糖類や食物繊維が含まれます。

 

 

短鎖脂肪酸は、この難消化性炭水化物を腸内細菌が分解することにより、産生されます。

その種類は三つあり、お酢の主成分である酢酸、ブルーチーズの酸味や香りを醸すプロピオン酸、バターの香りの元である酪酸です。

 

短鎖脂肪酸の代表とも言える酪酸を作り出せるのは、実は酪酸菌という細菌だけで、他の乳酸菌やビフィズス菌には、酪酸を作り出すことはできません。

 

 

酪酸は、先に挙げた「腸内を弱酸性にする」というはたらきを持ち、悪玉菌の発育を抑えます。

腸内が弱酸性になると、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルの吸収が良くなります。

 

また、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌が住みやすい腸内環境を作ります。

 

つまり、酪酸は腸内フローラを美しく整え、維持するはたらきをしているわけです。

 

 

逆に、短鎖脂肪酸が不足すると、いろんな細菌やウィルスに感染しやすくなり、病気の治りが遅くなります。

 

大腸のバリア機能が低下するからです。

 

また、短鎖脂肪酸は結腸の粘液分泌を促すはたらきもするため、不足すると粘液が減り、便のすべりが悪くなります。

 

しかも、この粘液は、便に含まれる細菌が腸管の壁から体内に侵入することを防いでいるため、病気にかかるリスクが上がってしまうのです。

 

 

 

病気にかかるリスクが上がってしまうことになったら大変ですから、やはり普段から、短鎖脂肪酸をたっぷり作り出せる生活をしたいですね。

 

そのコツは、「オリゴ糖や食物繊維を充分に摂取する」ことや、「オリゴ糖や食物繊維を発酵させるビフィズス菌を摂取する」ことです。

 

食物繊維を消化するときに産生するのが短鎖脂肪酸ですから。

 

 

食物繊維やオリゴ糖を含む乳酸菌やビフィズス菌のサプリを飲むことも、有効です。

 

 

 

短鎖脂肪酸を味方につける!

 

水溶性と非水溶性の食物繊維、どっちも大事です

 

では、短鎖脂肪酸が十分に足りているか、そうでないかはどうすれば分かるのでしょうか。

 

 

分かりやすい目安は、便のにおいだと言われています。

難消化性炭水化物が足りない状態の腸内では、腸内細菌が炭水化物の代わりにいろんなものをエサにします。

 

たとえばタンパク質が分解されて産生された尿素や、死んだ腸管上皮細胞や、その辺にある雑多な細菌類。

 

すると、大量にアンモニアや硫化水素などが生じ、便が嫌な臭いを持つようになるのです。

 

排泄した時のにおいが、いつもよりきつく感じたら、短鎖脂肪酸不足かも知れません。つまり、食物繊維が不足すると便が臭くなるんですね。

 

食物繊維には、水溶性と非水溶性がありますが、両方バランスよく食べることが大切です。

 

つまり、果物、海藻類、豆類、穀類などをなるべく多種類食べるようにしましょう。

 

 

短鎖脂肪酸の効能について、「抗肥満作用」「抗糖尿病作用」を挙げている医師もいます。

 

「良いことづくめ」のそんな有機酸を、わたしたちの体は食事を材料に自分で作り出すのですから、なんとも頼もしく、そして神秘的ですね。

 

 

どうか丁寧な食事で、あなたの優秀な体をいたわってあげてください。

 

 

難しい言葉がたくさん出てきて、一見専門的でオカタイ話に見えたかも知れませんが、実はとても単純なお話だと、お分かりいただけたのではないでしょうか。

 

 

ざっくりまとめると、

「人の体をすこやかに保つためのさまざまな働きを持つ、短鎖脂肪酸の存在が分かってきた」

 

「短鎖脂肪酸は不足すると太ったり便秘になったり病気になったりする」

 

「短鎖脂肪酸をたくさん作るためには食物繊維やビフィズス菌をしっかり摂ることが大事」

 

 

そんなところでしょうか。

 

 

次回も、爽やかに、軽やかに、毎日を送るための腸活のお話をご用意します。

 

 

食物繊維豊富な食材を積極的に取り入れながら、どうか笑顔でお過ごしください。